4月1日のお花見


「今から一緒に公園に花見にでも行かないか?」
阿高に誘われた。
4月1日の夕方のこと。

春休み中のクラブ活動で学校にきていた苑上は、帰り道で偶然阿高に出会ったのだった。
その阿高の突然の誘いに、苑上は動揺した。

うそ、だろうか。
何でも信じてしまいやすい苑上は、今日は朝から友人たちにだまされっぱなしなのだった。
去年1年で、阿高と苑上は軽口をたたけるような関係になっていて、だからこそ冗談かもしれないと苑上は思った。

おそるおそる阿高の顔を見上げてみる。
きっと阿高のふざけた笑顔があるはず、そう思って。

けれどそこにあったのは、苑上が予想もしなかったほど真摯な表情をした阿高の顔だった。
阿高は、淡く澄んだ茶色の瞳でじっと苑上の答えを待っていた。

「ええ。わたくしも行きたい」
苑上が答えると、阿高はいっきに表情をゆるめた。
「よかった。じゃあ、コンビニでなんか買っていくか」


桜の舞い散る公園のベンチに座って二人でみたらしだんごを食べながら、苑上は考えていたことを口に出してみた。
「さっき・・・」
「え?」
「さっきね・・・阿高にからかわれているのかと思った」
阿高は心底意外そうに目を見開いた。
「どうして?」
「だって、今日はエイプリルフールでしょう。わたくし朝から何度もだまされていたから」
「おれはだまさないよ」
阿高は笑った。
「おれは苑上をだまさない。苑上には嘘はつかない。絶対だ」
阿高に頭をぽんぽんとされて、苑上は赤くなってうつむいた。

そう、阿高はこういう人なのだ。

「来年も一緒に花見しような」
阿高がベンチから立ち上がりながら言った。
言いながら振り返って、座ったままの苑上に手を差し伸べる。
「ええ」
苑上は深くうなずいた。

4月1日。
阿高の言葉を心から信じて、苑上は阿高の手をとった。





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なんとなくやってみたエイプリルフールねた。
なんかよくわからないことになりました(汗)

まだお花見してません。
早くしないと散ってしまうー!