ぴっころの突発妄想小説の続きです。
今回も一発書き(30分)なので、文章めちゃめちゃです。

うーん、本当はもっと日常で色々あるのに、すっとばしてるので「なんでいきなりこいつがこいつを好きになってるんだ」とか
なぞすぎですいません(汗)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



鷹男と高道の病状は安定し、二人とも快方にむかっていた。
やはり、普段から体を鍛えている者は回復も早いものだと沙良は思った。

鷹男の部屋に入ると、鷹男が衾を片付けているところだった。

「まだ寝ていなくてはだめよ」
「もう大丈夫です」
鷹男は笑った。
「沙良姫には本当に感謝しています。ありがとうございました」
沙良は微笑んだ。
「そんなこと気にしないで。わたしが勝手にしたことだもの。
それよりも、わたしはあなたに言いたいことがあってきたの」
沙良があらたまってそういうと、鷹男は怪訝な顔をした。
「なんです?」
「わたし・・・」
言いかけながら、最後にもう一度自分の気持ちを確認する。
「わたし、みやこに帰りたくない」
「えっ?」
「もしできるなら、鷹男の本当の妻になって、ここで暮らしたいの」

沙良の言葉に、鷹男は心底驚いたようだった。
何度か口を開くものの、言葉が出ないようだ。
やはり、自分のような娘ではだめなのだろうかと、沙良は不安になった。
「やっぱり・・・だめかしら?」
「い、いえ・・・ただ・・・・・・」
鷹男が言葉を継げないのを見て、沙良は自分のわがままを反省した。
自分が都に、父の政治の手駒のひとつに戻りたくないからといって、沙良に鷹男の人生を左右する
権利はないのだ。

「ごめんなさい、変なことを言ってしまって。忘れてちょうだい」
そういったものの、涙が出てしまうのはとめられなかった。
形だけの夫婦だというのに、鷹男があんまり優しくしてくれるので勘違いしそうになっていた。
このまま鷹男のそばにいていいのかもしれないと。

沙良が踵を返して部屋を出ようとすると、鷹男に腕をつかまれた。
「待ってください」
涙でぐしゃぐしゃの自分の顔を見られたくなくて、沙良は振り返らずに言った。
「お願い、はなして」
だが、鷹男は沙良の手をはなさなかった。
それどころか、沙良を自分の方へ引き寄せ、抱きすくめてしまった。

一瞬のうちにおこったできごとに、沙良が目を白黒させていると、鷹男は静かに詫びた。
「すみません、沙良姫」
沙良は無理に笑顔を作って首を振った。
「いいえ、わたくしがわがままだったの。本当に気にしないで」
「そうではなく、おれの身分の問題です」
「え?」
沙良が顔を上げると、鷹男が難しい顔をして沙良を見ていた。
「姫の身分を考えれば、受領の妻でもめったにないことなのに、おれはその受領より
まだ下の身分なのです。そのおれが姫を妻になど」

沙良は顔を上げた。
「あなたが気にしているのは、身分のことだけなの?わたしが気に入らないのではなくて?」
沙良の問いに、鷹男は目を見開いた。

「姫を気に入らないなんて、そんなわけあるはずがない。姫のお気持ちはうれしいのです。
ただ、あまりに身分違いなことですので・・・」
「身分なんて気にしないで」
沙良は言った。
そして、笑った。
「だって、あなたがわたしを都からさらいだしたのでしょう。いまさら身分もなにもないじゃない」
「そう・・・でしょうか」
「そうよ」
沙良がそういうと、鷹男は沙良を強く抱きしめた。
「ならば姫、おれの妻になってください」
「ええ、喜んで」
沙良はそう答えると、ふと思い出したように笑った。
「わたしをさらうときはあんなに無理やりだったのに、おかしいわね」
「それは・・・もう言わないでください」
鷹男は顔を赤らめると、沙良にひとつくちづけた。


    *

鷹男より数日遅れて全快した高道から、贈り物が届いた。
美しい着物や櫛だ。都のものにも劣らないような豪奢なものだった。
看病のお礼だという。
沙良はさっそく身につけると、鷹男に見せに行った。

「見て、高道さまがくださったの」
「ええ・・・おきれいです」
鷹男は心なしか暗い表情をしていた。ほめ言葉にも力がない。

「無理にほめなくてもいいのよ?」
「無理になど・・・本当におきれいですから」
「それならどうしたの、どこか具合でも悪いの?」
「いえ・・・」
鷹男は言葉を濁した。
そして、言った。
「姫、いまからおれが言うことを怒らずに聞いてくれますか」
「・・・内容によるわ」

なんだかいやな予感がして、沙良は胸が苦しくなった。
「なんなの?」
沙良が促すと、鷹男はあきらめたように言った。
「姫には・・・わが主、高道さまの妻になっていただきたいのです」
急に息ができなくなったように胸が苦しくなって、沙良は着物の上から胸を押さえた。

「どうして?わたくしはあなたの妻になるのでしょう?そう約束したじゃない」
「すみません、おれがばかでした」
「どうして・・・」
涙が勝手にこぼれた。わけがわからなかった。

「高道さまは姫を好いています。今まで気づかなかったおれがばかでした。
それに、高道さまは受領。位は低いですが、貴族です。沙良さまは高道さまの妻に
なられたほうが幸せです」
「そんなこと勝手に決めないで」
沙良は泣きながら鷹男をにらんだ。
鷹男の妻になりたいとあんなに伝えたのに、どうして高道の妻になる方が幸せだと思うのか、
鷹男の考えがわからなかった。

「すみません。でも、おれはどうしても高道さまには望む結婚をしていただきたいのです。
高道さまには幸せになっていただきたいのです。そのために、姫をみやこからさらうことさえ
しました。姫はかぐやどのではありませんでしたが、高道さまは姫をお好きです」
「・・・・高道さまがあなたにそういったの」
「いえ。でも、見ていればわかります。幸い、わたしと姫はまだ正式な夫婦ではない。
いまならまだ間に合います」
鷹男が自分のことを「わたし」と言っていることに沙良は気づいた。
そうすることで、沙良との間に距離をとろうとしているのが感じられた。

「・・・わかったわ」
沙良はつぶやいた。心が冷え切って凍えているような気がした。
「あなたはわたくしよりも主である兄上が大事。そういうことなのね」
「すみません・・・」
鷹男は唇をかみしめてうつむいた。

鷹男は自分のことなどいらないのだ、そう思うと、心が引き裂かれるようだった。
「・・・うそつき」
沙良の口から言葉がこぼれた。
「わたくしを妻にしてくれるといったのに・・・鷹男はうそつきだわ」
「姫、わたしは・・・」
「もういい」
沙良はあふれる涙を袖でぬぐった。
「もういい。鷹男を信じたわたくしがばかだった。鷹男なんて大嫌い」
そう言って部屋から走り出た沙良を、鷹男は呼び止めさえしなかった。

(続く)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

すみません、まだまだ妄想は続きます(汗)


2006/05/29 一部修正