「おい、あんまり飛ぶなよ」
おれはジャニに声をかけた。
おれの頭よりもまだ高いところで浮かんでいたジャニは、不満そうな顔でおれを見た。
「いいじゃない、べつに」
「おまえな・・・」
言いかけて、おれはジャニから視線をそらせた。
また、だ。
またスカートというらしい布ががめくれている。
足の大部分が見えてしまっていて、おれはどぎまぎした。
おれの知るかぎり、女性は足なんて見せないものだ。
「飛ぶんだったらもっと低く飛べ」
おれはそっぽを向いたまま言った。
ジャニはぶつぶつ言いながらもおれの言葉に従った。

ジャニが女だと意識するようになったのはいつからだっただろう。
初めはただの魔人だと思っていた。
男か女かなんてどうでもよかったし、顔もよく見ていなかった。
だが、一緒に旅をするうちに、さすがのおれもジャニをよく見るようになった。
おれたちより彫りは浅いけれど、愛らしい顔立ち。そしてなによりもここらでは見たことがないような象牙色の肌。

ジャニは無邪気だ。
ちょっとうるさいしわがままなところもあるけれど、素直なやつだ。
一緒にいてここまでくつろげる女は初めてだった。
ジャニが魔人だからかと思っていたが、どうやらそうではなさそうだった。

「ハールーン、もうすぐバッソーラの港よ」
ジャニがまた高く飛びながら言った。
「こら。もう飛ぶなと言っているだろう」
「はいはい」
ジャニはしぶしぶという感じで下りてきて、またおれの横に並んだ。


もうすぐバッソーラだ。
おれはそこから船に乗る。
そしていろんなものを見て回るんだ。
世界中のいろんなものを、ジャニと一緒に!








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



あああああぁぁぁぁ。
なんかまたおかしい(泣)

「鍵」では主人公ひろみに新しいラブがなかったのが心残りで、パラレルにしてちょっとばかしハールーンに語らせてみようと思ったのですが・・・大失敗です。
ごめんね、ハールーン。