銀のガチョウ 2

「ねえ、アンナ」
メアリはテーブルにひじをつき、足をぶらぶらさせながら焼き菓子をほおばるという
まるで姫君らしからぬ格好のまま、侍女のアンナに声をかけた。

「なんだかんだで、3人も夫候補が現れちゃったわけだけど、お父様ったらこれから
どうする気かしらね。まさかわたしを笑わせる男が3人もいるとは思わなかったみたい
だけど、それが読みが甘いって言うのよね」
「そのことですけれど・・・」
アンナは言いにくそうに目を伏せた。
「新しいおふれが出たそうなのです」

メアリは驚いて目を見開いた。
「なに、お父様ってば、またおふれを出したの?お父様もつくづくひまな人よね。
で、どんな内容なの?」
「『姫を笑わせることができ、かつ盗賊ロジャーを捕らえた者に姫を与える』という内容
だそうですわ」
「盗賊ロジャーって、なんだか、金持ちからお金を盗んで貧しい者にばらまくっていう、
義賊のロジャーでしょう。わたしけっこうファンなのよね。まあ、そういう有名人を
狙うところがミーハーなお父様らしいっちゃらしんだけど」

メアリは腕組みをして首をかしげた。
「ということは、アベルとセシルとエドワードの3人が盗賊退治に行くわけね?」
「いえ・・・それが・・・」
アンナは急に口ごもった。
「なによ、アンナ。いいからはっきり言ってちょうだい」
メアリが先を促すと、アンナは顔を上げた。
「それが・・・盗賊ロジャーがおふれの内容をききつけて、自分の首と引き換えになる
姫君の顔を拝んでみたい、と言い出したそうなのです。それで、トリニール城にお住まいの
姫のおばあさまがさらわれてしまったとか」
「はぁっ?」
メアリは思考停止状態に陥った。

「なんでそこでおばあさまが出てくるわけ?」
「ですから・・・おばあさまを助けたければ、姫に山賊の根城まで来るように、と
いうことらしいのです・・・」
そこまで言うと、アンナははらはらと涙をこぼしながらメアリの手をとった。
「わたくし、どこまでも姫さまについてまいりますわ。この身に代えても姫様の身をお守りします。
ですから、どうか・・・」

「いや・・・・ていうか・・・・」
メアリはアンナに手をとられたままため息をつき、ソファに体を沈ませた。
「諸悪の根源はお父様のアホなお触れじゃない・・・・ほんっともうばかばかしすぎて
力が抜けるわ」

メアリはしばらく脱力していたが、やがて勢いよく立ち上がった。

「ともあれ、おばあさまを助けに行かなくては。わたしをかわいがってくださった大好きな
おばあさまだもの。何としてでも救い出さねばならないわ」

「おれも行くよ」
聞きなれた声に振り返れば、従兄弟のセシルが背後に立っていた。
その横にはアベルとエドワードもいる。
「ぼくも一緒に行かせてほしい」
「もちろん、わたしも同行いたします」

メアリは少し考えてから言った。
「ありがとう。うちのちょっと考えの足りないお父様のせいで迷惑かけるけど、頼むわね。
道中の護衛もエドワード一人よりも3人いた方が心強いし、うれしいわ」
メアリがそう言うと、エドワードがむっとしたように言い返した。
「お言葉ですが、護衛ならわたし一人でも十分かと思いますが。むしろ彼らは足手まといかと」

メアリは頭の上で手をひらひらを振った。
「いいじゃないの。信頼できる人は多いほうが何かと助かるものよ。それに、山賊ロジャーを
捕まえたらわたしと結婚できるらしいし、チャンスは一応平等にしておかないとね」
「そうだよ。エドワード、おまえ抜け駆けすんなよ」
セシルが口を尖らせた。

「・・・・ていうかお父様ってば」
メアリの心の中で、どす黒い雲がむくむくとわきあがった。
「お父様ってば、ほんとに変なおふればっかり出してマジありえないんですけど・・・・ほんと
バカすぎっていうか・・・もう本気で我慢も限界っていうか・・・・マジぶちキレだっつーの」
メアリはぶつぶつと父王に悪態をつき続けていたが、アベルが困ったように苦笑しながら
メアリの頭をなでてくれると、次第に黒い雲は消え去り、気持ちが落ち着いてきた。

メアリは深呼吸をして、顔を上げた。
「そうね。グチっててもどうしようもないし、行くしかないわね」

そうして、メアリと侍女のアンナ、そしてメアリの求婚者の3人はトリル山脈に住むという
盗賊ロジャーの元へ向かうことになったのだった。

(続く)

        *                 *

はい、やばいくらいに一発書き駄文です。。
しかも、99%が姫のトークと説明口調の侍女のセリフでできています(←典型的駄文)

まあ、旅に出るまでの前ふりということで・・・・。

読んでくださって、ありがとうございました!






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