不純な動機



生徒会役員発表掲示板の前で、遠子がまとわりつく菅流を追い払っていると、いつのまにか小倶那も
すぐ横に立っていた。
小倶那は微笑んで言った。
「すごいね、副会長だ」
遠子は首を振った。
「わたしの力じゃないわ。あかる姉さまの力よ」
遠子の応援演説を買って出てくれたのは、いとこのあかるだった。
あかるは美人で優しく、だれからも好かれていた。
遠子の副会長当選は、あかるの人気のおこぼれをもらったとしか思えなかった。
「そんなことはないよ。遠子の演説、おもしろかった」
「確かに。わけのわからないやる気だけは感じておもしろかったな」
口をはさんだのは菅流だった。
菅流は遠子の肩を抱いて、小倶那に微笑みかけた。(当然、遠子はすぐに菅流の手を振り払った)


(イラスト・ ぬえさん)



「これからよろしく、総務どの♪」
「よ、よろしくお願いします」
小倶那は菅流の軽いノリに驚いたようだったが、丁寧に挨拶を返した。
「こっちはおれの友達で、書記の扶鋤」
「よろしくお願いします」
小倶那は、菅流の隣に立っている扶鋤にもあいさつをした。
人の良さそうな顔をした扶鋤は、遠子と小倶那に向かってにっこり笑った。

「それで、二人は付き合ってるのかな?」
菅流は小倶那と遠子を交互に見ていった。
「ただの幼なじみです」
遠子が不機嫌にそう言うと、菅流は満足げにうなずいた。
「よかった。生徒会内に恋愛感情があると仕事上ややこしいからな。生徒会内の恋愛はご法度だ。
遠子も、いくらおれがかっこよくても惚れないように」
「・・・大丈夫です、100%惚れませんから」
遠子はうんざりして答えた。

「そもそも、おまえにそんなことを決める権利はないだろう」
横から口を出したのは角鹿だった。
「会計の角鹿だ。いくらおまえが会長でも、なんでも言うなりにはならないからな。納得できないことは
認めない」
そして、角鹿は、菅流の横にいた遠子を自分の方へ引き寄せた。
「遠子、こいつは学年でも有名な女たらしの危険人物だから、必要以上に近寄らないようにな」
「うん」
遠子が素直にうなずくと、菅流は口をとがらせた。
「ひどい言われようだな。いくらおれでも、こんなお子様には手を出さないぜ」
「なんとでも言え。おれは遠子をおまえの毒牙から守るために生徒会に入ったんだからな」
「お子様で悪かったわね」
遠子はつんとそっぽを向いた。
小倶那と扶鋤は困ったように顔を見合わせて苦笑している。

小倶那のために生徒会に入った遠子。
遠子のために生徒会に入ったという角鹿。
菅流は、おそらく女の子にモテるために生徒会長になったに違いない。

生徒会の仕事は一生懸命やるつもりだが、どう見ても気の合う5人組になれるとは思えず、こんなことで
生徒会の仕事はうまくいくのだろうかと遠子は不安になった。
(続)








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