■荻原先生シンポジウムレポ■




2008年7月5日に開催された古代文学会シンポジウムのレポです。 自分のメモをべた打ちしていますので、読みにくかったらすみません。 シンポジウムに参加できなかった方に、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
■古代文学会シンポジウム  2008年7月5日(土)14:00〜17:00 共立女子大学にて  (パネリストとして荻原先生、三浦祐之先生が登場) <荻原先生> □創作に至るまで ・東京生まれの町田育ち ・古事記との向かい合い方は戦前戦後や人によって違う ・両親は地方から出てきて東京で結婚 ・多摩丘陵を切り開いた新興住宅地に住む ・両親は終戦を10代で迎えた人達 ・荻原先生は初詣に行ったことがなかった ・そういうものが根付いていないところで生きてきた ・何の先入観もなく、昭和40年代に少年少女名作シリーズで古事記に出会う ・全50巻のうち、3巻くらいが日本の話。古事記と風土記も入っていた。 ・当時小学校低学年 ・ギリシア神話、北欧神話、日本神話は似ていると思った ・オルフェウスとイザナギ、ペルセウスとスサノオなど ・逃げるときに何かを投げるなど、「同じようなパターンを世界中で  やっているのが神話か」と思った ・子どものころに読んだものはずっと覚えている ・その後、児童文学を読み始めた ・主に外国ものを読んでいた ・佐藤さとるさんのコロボックルシリーズ(だれも知らない小さな国)を  小4のときに読み、そこでコロボックルの先祖は「スクナヒコサマ」と  名前が出てきたときに、少年少女名作シリーズで読んだあの神様だ、  とわかった。 ・そう思ったことで、余計にコロボックルという小人の実在感を感じた。 ・日本神話が使われることによる実在感 ・ほとんど外国ファンタジーで育った ・イギリスものが好きだった ・ナルニア物語はキリスト教色が強いが、ケルト神話を使ったファンタジー  を読んだときに、「私なら日本神話で書いてもいいのかも?」と思った。 ・当時は高校3年 ・信仰ではなく、昔話としての古事記が好きだった ・大学に入ったら何か書こうかなと思っていた。 ・でも、書くよりも研究しようと思ってファンタジー研究会に入った ・そこは研究というより書く雰囲気だった。 ・すすめられて、スサノオを少年にした80枚くらいの話を書いた。  →すごく難しいと気づいた ・古事記が強すぎてひきずられてしまう ・自分の考える創作の柔らかさに合わない ・スサノオなど、現代の私たちの感覚からすると納得できない行動をする。 ・でも、そういう部分を除くとつまらなくなる ・古事記は、昔の話をここまで残しただけの何かがある。強い。 ・短い話として見ると愛しい古事記だが、通して読むとまとまりがない。  でも、変えてしまうとおもしろくない。 □空色勾玉について ・創作を最初に楽しんで書いたのは「西の善き魔女」。大学のとき。 ・作家にならなくてもいいから、書いて楽しむことはしたいと思っていた ・そんなとき、友人(U村さん)が福武書店で児童文学を立ち上げ、書いて  みないかと言われた。 ・日本神話で書きたいと思ったが、「古事記はなし」と思った。引っ張られてしまうから。 ・そんなとき、延喜式祝詞(のりと)を読んだ。 ・根の国の側からの視点で、これなら書けそうと思った ・古事記はいらないと思って書いたのに、照日、月代、稚羽矢という3人が出てきた ・古事記を書き換えようなどと考えなくていいのだと気づいた。 ・古事記は強いので、勝手に入ってくるから。 ・空色勾玉では、狭也と稚羽矢を初めに考えた。 ・その後、稚羽矢には双子の兄と姉がいる設定にしようと考えた ・だったら、双子は日と月にしようと思った ・そうして、照日、月代が ・これが神話なのかと思った ・輝の宮を出るところで原稿用紙300枚を超えた ・その時点で、ラストをどうするか考えていなかった ・書くのをやめようかと思ったが、U村さんに見せてみたところ、おもしろいから続きを  書くように言われた。 ・輝の神と闇の女神が出てくるとは自分でも思わなかった ・狭也が根の国に行くとも思わなかった ・自分の深層意識にある、それが自分でも予期せずにふと湧いてくる ・創作の醍醐味を感じた ・オリジナルでありたいが、人間そのものが「オリジナル」ではない □白鳥異伝について ・古事記を読んだらみんなヤマトタケルを好きになる ・ヒーロー ・何か書くならヤマトタケルを使いたかった ・だが、ヤマトタケルの行動も破綻している ・でも、きれいにしてしまうとやっぱりおもしろくない ・卒論は児童文学だが、ゼミで常陸風土記を読んだ ・常陸の行方(なめかた)郡の地名の由来のお話 ・ヤマトタケルが弟橘媛と会っていた ・媛は死なずにその地にたどり着いていた ・「ハッピーエンドのヤマトタケルがあるのか!」と思い、東征ルートを  書き換えたりして遊んでいた ・勾玉にくっつけるとは思っていなかったが、勾玉を集める話と  生き延びるヤマトタケルの話がドッキングして白鳥異伝になった ・鳥のお葬式の話が好きだった ・マザーグースの「だれが殺したククロビン(だれが殺したこまどりを)」にかぶる ・鳥のお葬式の話は遠子の里の伝承にした ・自分が楽しんで創作をしようと思うと、神話がどんどん出てくる。 ・神話が生きているというのはこういうことかと思った。 <三浦祐之先生> ※レジュメを見ながらのお話でしたので、その内容は三浦先生の著書「古事記のひみつ」  などでご覧ください。  内容は、古事記と日本書紀の違い(出雲に関する部分が抜けていることを中心に)でした。  三浦しをんさんのお父様だけあって、ものすごく楽しい方で、ファンになりました♪  ここでは、その部分以外の内容をレポさせていただきます。 ・共立女子大学は第二の母校。20年勤務していた ・生まれは三重の山の中。本居宣長の生誕地の近く ・古事記研究は1960年の後半から ・「古事記の世界」「共同幻想論」などを読む ・戦前の古事記に対する反動から、戦後古事記は嫌われていた ・福音館の「やまとたける」(阿久根 治子)という童話 ・1967年 手塚治虫「火の鳥」(ヤマト編) ・映画「日本誕生」三船敏郎がヤマトタケル ・1988年 山岸涼子「ヤマトタケル」 ・1991年「白鳥異伝」 ・1940〜1950 英雄時代論争 ・「そのとき歴史が動いた」で古事記を取り上げていたが、あれは古事記ではなく  ただの「704年」でしかない ・古事記と日本書紀の違いが重要 ・未来をもっていくというのがファンタジー ・「少年は美少年でないといけない!」(←名言です♪) ・ヤマトタケルが女装してクマソタケルを殺すシーンはとても大切 ・ヤマトタケルが少年であることの証だから ・山岸涼子さんの「ヤマトタケル」にはそのシーンがなくて残念 ・白鳥異伝の魅力は、菅流というキャラクターの魅力もあるけれど、悲劇性の克服  というのが一番の魅力 ・そして薄紅につながる。伝えられていく、開かれていく物語(←この辺でちょっとうっかりうるっときちゃいました。。) ・そこが古事記と違う魅力 <対談> □三浦先生 ・私の古事記はうさんくさい ・古事記は語りという面がある ・知恵が逸脱して(悪知恵のようになって)しまうのも語りだから ・だから、舌禍が発生。ついつい語ってしまう ・じいさんが古事記を語るという形をとると、辻褄を合わせられる ・比較、中央アジア、英雄語り ・共通性がある ・語りの持っている物語の組み立て方には共通点がある ・伝播したのか、自然発生か ・日本海文化(出雲)をどう考えるか、物語世界のおもしろさに  ついついのめりこんでしまう □荻原先生 ・だまくらかしで勝つ主人公 ・ケルト神話のクフーリンなど ・力でなく、知恵で強いものに勝つ ・昔の語りでおもしろい話は、だまし討ちがよくある ・そこにヤマトタケルがのった ・古事記は歌や身振り手振りが見える気がするので、芸能があったのでは  ないかと思う。 □三浦先生 ・芸能があったという意見はそうだと思う ・古事記には110首以上の歌がある ・知恵→悪知恵になる(トリックスター) ・荻原さんの登場人物では菅流の原典(ちいさこべのすがる等)がそう ・知恵で権力者を風刺することもある ・いわゆるトリックスター □三浦先生 「空色を書いた時点で白鳥や薄紅構想はあったのか?」 □荻原先生 「続きにするつもりはなかった。空色の後、1年くらいは真剣にそう思っていた。  白鳥は、一生懸命書いたけど、勾玉が一個余っちゃったんです」 □三浦先生 「菅流が高志の国の話をしている。高志は古代翡翠の産地(糸魚川)。玉作り用の翡翠を  仕入れるようなイメージで意識して書いていたのか?」 □荻原先生 ・特には意識していなかったが、読んだ文献などから無意識に出たのかも □三浦先生 ・勾玉と剣というテーマは? □荻原先生 ・古代の宝としての勾玉、それから三種の神器のイメージ □三浦先生 ・古代で翡翠は糸魚川流域でしか採れない ・出雲は海洋文化の典型 □司会 ・風神秘抄では、芸能が出てきますが □荻原先生 ・笛や舞は神様を降ろすための所作だと読んだ。 ・芸能は神様に通じるところがある 「三浦先生は古事記にとりつかれたような気分になることはありますか?」 □三浦先生 「ついついぶつぶつと本音をつぶやくことはあります」 <質疑応答>(一部) Q1.白鳥異伝の日牟加はどこですか?宮崎かと思っていたが、作中の描写を   読むと、熊本のようにも思えるのですが・・・ A.(荻原先生)九州全体をイメージして書いたので、どこという特定の地は定めていない。          合わせようとすると矛盾が出るので。 Q2.作中で「怪物」を出すことについて、荻原作品にはあまり出てこないが? A.(荻原先生)怪物を出すなら、自分が怪物に何をなぞらえているのかということを          考えなくてはならない。          「怪物」のような絶対悪というのは、自分の陰の部分。          たとえば、「自分の強すぎる親」を怪物になぞらえるなど。          私はそこまではまだ取り組めないので、絶対悪の怪物は出せない。 Q3.白鳥異伝や菅流について A.(三浦先生)白鳥異伝のすばらしさは、菅流もとても魅力的だが、一番すばらしいのは          遠子と小倶那が開拓を始めるラストシーン。          古事記は閉じた物語。          でも、白鳥異伝は、その悲劇性を克服して、開かれていく、未来につながっていく。          そこが一番すばらしい。          それがファンタジーの魅力。物語の魅力。 Q4.古事記では、物語にすることでなぐさめているのか。たたりを恐れるような? A.(三浦先生)同じように思う。語るって何なのか。何に語りかけているのか。          平家物語もそうだが、聴衆以外にも語りかけている。          なぐさめや鎮魂と言い切ると語弊があるかもしれないが、そのように          何か他のものに語りかける部分はある。 <感想> とても興味深いお話が聞けました。 行ってよかったです! 古代文学会の皆様、ありがとうございました! 三浦先生の本も買おうと思います♪ 「少年は美少年でなくてはならない!」は名言ですね♪ 荻原先生は、とにかくおかわいらしかったです〜v (最前列で、荻原先生を凝視しまくってしまいすみませんでした・・・) シンポジウム終了後、無理を承知でぶしつけにもサインをお願いしてみたところ、 シンポジウム後でお疲れにも関わらず、希望する人全員にサインをしてくださいました(40人くらい?) シンポジウムなのでサインは無理かもと思っていましたが、念のため持っていって いた「薄紅天女」にサインをしていただきました!! 感激♪ 風神発売サイン会のときは、風神にしかサインをしていただけないという決まりだったので、 いつか最愛の書薄紅天女にぜひサインをいただきたいなと思っていたのですv サイン会のときは、頭が真っ白になって握手していただくのを忘れてしまったので、 今回は握手していただきました♪ 感激でした♪ 「RDG読みました!早く次が読みたいです!」 みたいなことを申し上げた気がします。 (テンション上がってあまり覚えていないです。。) 荻原先生は、 「なるべく間をあけずに書きますね」 とおっしゃっていたような気がします。 ぴっころの持っているサイン本 ・空色勾玉(徳間)・・・ミュージカル空色勾玉にて(出演者ほぼ全員のサイン+荻原先生のサイン♪) ・薄紅天女(徳間)・・・シンポジウムにて ・風神秘抄(徳間)・・・サイン会にて ・樹上のゆりかご・・・紀伊国屋限定サイン本 つ、次はぜひ黒白鳥(福武版白鳥異伝)にサインを・・・・!! そんなチャンスが次にいつめぐってくるかわかりませんが、その日を夢見て20年計画で 気長に待ちたいと思います♪ ここ数年で荻原先生に3回もお会いできたのだから、きっとこれからもお会いできるチャンスが ありますよね?(どきどき) サインのときに、サイン列の最後尾付近に並んでおられたKさんに、 「荻原先生に『阿高はいつ苑上のことを好きになったんですか?』って質問してください」 とお願いしました。 (自分の番のときは、すっかり忘れていたのです・・・) 「ご想像におまかせします」とかかな〜と思っていたのですが、なんと、 「阿高が苑上は好きになったのは、安殿のところに一緒についていくと苑上が言ったとき」 と荻原先生が答えてくださったそうです! うわー、そうだったのかー!! わかって幸せ♪ Kさん、荻原先生、ありがとうございました〜!! <最後に> 古代文学会の皆様、三浦先生、素敵な機会をいただきありがとうございました! 荻原先生、押し寄せるファンの私たちに温かく対応してくださって本当にありがとうございました! 一緒にお話してくださったオギワラーの皆様、ありがとうございました! ビバ★古事記&荻原作品♪です。 ※そういえば、今回初対面の荻原ファンの方と話していて気づいたこと。   「そっか、荻原作品所持数は各作品1冊ずつという方も多いのか」と。   うちには、福武空色複数、福武白鳥複数、徳間空色複数、徳間白鳥複数、徳間薄紅複数、   風神2冊、西魔女2セット(牛島、桃川、ハードカバーも少し)、勾玉ノベルス2セット、   かぎ3種(ハードカバー、ノベルス2種)、樹上3冊(単行本2冊、ノベルス1冊)、RDG1冊   があるので、すっかりそれが普通の気がしてました。。   勾玉三部作化粧箱も、憧れの化粧箱が欲しくてまた買っちゃったですし(笑)   よく考えたら(よく考えなくても)多いですね。   白鳥異伝だけでも9セット(ハードカバー7冊、ノベルス2セット)ある・・・☆   本棚2段が荻原作品だけで埋まってます(というか、それでも入りきってない・・・)   自室やリビングや寝室やバッグの中や、いろんなところに荻原作品を置いておき、   読みたいときにすぐ読める体制にしています。 以上でレポは終わりです。 ここまで読んでくださってありがとうございました! 2008年7月12日   ぴっころ 拝



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