あたその日記



草十の決め台詞 de 阿高


苑上をさらってくるなり、一行は武蔵へと出発した。
藤太も、広梨も、帰れるのがうれしいらしく、足どりも軽い。

「阿高が嫁さんを連れて帰ったと知ったら、みんなびっくりするぞ」
藤太が笑顔でそう言うと、苑上が言った。
「藤太には何人くらい通う女の人がいるの?」
「ぶっ」
竹筒から水を飲もうとしていた藤太がむせた。
「ひどいな。今は千種一筋だよ」
「そうなの」
苑上はうなずいた。

「藤太と阿高の父君には何人くらい奥方がいらっしゃるのかしら?」
これまたとっぴな質問に、阿高と藤太は顔を見合わせた。

「・・・鈴、どうした?」
阿高が尋ねると、苑上は目を伏せた。
「ううん、ただ、竹芝ではだいたい何人くらい妻をもつものなのかと思って」
苑上は少ししょんぼりとして言った。
「阿高の妻にしてもらえるのはうれしいけれど、妻があまり多くないとうれしい。
わたくしのわがままだとは思うけれど」
「いったい何を言っているんだ」
阿高は困惑した。
鈴以外の女を妻にもつ気もない阿高にとって、複数の妻を持つのが当然と思い込んで
いるらしい鈴の思考は理解できなかった。

「鈴の知っている男は、みんな何人も奥方がいるのかい?」
広梨が尋ねると、苑上はきょとんとしてうなずいた。
「ええ。もちろんよ。父上もそうだし、母上の親族の方も皆」

やれやれと笑う藤太と広梨を横目に、阿高は苦笑しながら苑上の頭をぽんぽんとなでた。
「鈴の回りにはそんな男ばかりだったんだな」

そして、阿高は不敵に微笑んで言った。
「でも、坂東の男はそうじゃないよ。後で教えてやる」

(終)




  *                  *

<コメント>


草十の決め台詞、
「坂東の男はそうじゃないよ。後で教えてやる」
の阿高バージョンです。

薄紅天女では阿高の苑上への気持ちが書かれていないため、日々妄想するしか
なかったのですが、風神では草十郎の視点で恋愛が描かれていて、「きっと阿高も
こう思ってたんだろうな〜vv」と想像して妄想をふくらませた結果が、これです。

脳内萌えを形にすることができ、個人的には満足ですが、はずかしいですね(笑)

その1の方は、「阿高も草十郎みたいに、好きって気がついたらあっさり好きと
言ってそう♪」「しかも気づいたらさくっと接吻とかしちゃってそう♪」という妄想です。

その2の方は「苑上のまわりって、みんな複数の妻をもつのが当然の人が多かった
だろうから、(一番身近な父上もそうだし)、きっと阿高も何人も奥さんをもつと思って
心配するんじゃないかな」「そこに草十の決め台詞がくればばっちりだね!」という
妄想を形にしたものです。





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